前回の記事ではH-1Bビザの審査に落ちた話を書きましたが、今回は、今夫が持っている「抽選なしで取得したH-1Bビザ」について書こうと思います。※あくまでも、夫のケースです。
取得したのは昨年2022年。この方法はほとんど知られておらず、移民弁護士でさえ知らない弁護士も多いと思います。私たちも、2021年までは全く知らず、夫がたまたま所属していた起業家コミュニティーの弁護士事務所からこの情報を得ました。
H-1Bビザの申請は年に1回、そして抽選確率も20〜30%と高くないので、その機会を逃してしまった方や抽選に漏れてしまった方にとっては、アメリカで働くための一つの選択肢になりうると思います。
[抽選なしH-1Bビザ発給の仕組み]
- 学生に教育の機会を提供するアメリカの非営利会社(以下「A」とする)が、夫を雇用。
- Aがスポンサーとなり、夫はAの従業員としてH-1Bを取得 ※抽選なし
- Aでの就労を条件に、別の会社(元々働いている会社)のH-1Bビザを取得。※抽選なし
上記の通り、夫は2つの会社に所属し働くことになります。学生に教育の機会を提供するアメリカの非営利会社のうち、特別な申請に通過した会社のみ、抽選をスキップしてH-1Bを申請できるようになるそうです。(Cap-Exempt H-1Bといいます)
[ビザ取得の流れ]
夫は、ビザ取得前は日本からリモートで働いていました。会社はシリコンバレーのスタートアップです。以下、私たちの体験談を交えビザ申請〜取得までの流れを書きます。
Step1:非営利会社Aで適合チェックを受ける
Aはアメリカの大学生に教育の機会を提供する会社なので、夫は講師として大学生に講義をします。よって、夫の学歴や語学力、職務経験など、講師として適切かを判断されます。このチェックは大変厳しい内容ですが、移民局がビザ審査時に用いるのと同じ基準を持って判断するからだそう。つまり、この適合チェックに合格すれば、移民局のビザ審査も問題なく通る、ということになります。その証拠に、Aをからビザを申請した人で落ちた人は今まで1人もおらず100%の通過率だそう(2021年時点)。
Step2:非営利会社Aとの雇用契約
Aとの雇用契約を結びますが、後ろ盾となっているのは、夫が元々働いている会社です。また、これまでの業務に加え、Aでの講師としての業務が発生する点を事前に双方にて確認することが大切です。業務時間は週5時間ほど、多くはないですが時給ベースで給与も出ます。
Step3:非営利会社AからのH–1Bビザ申請
Aとパートナーシップを結んでいる弁護士事務所を介し、移民局にH-1Bビザを申請します。正しくは忘れてしまいましたが、申請から2週間ほどで移民局から通過の返事が来たと思います。なお、我が家の場合は、妻である私と子供のH-4ビザも同時申請しました。
Step4:アメリカ大使館での面接
東京のアメリカ大使館で面接を受けました。
H-4申請者も同時に面接が可能なので、娘を連れ家族4人で行きました。厳しいのは覚悟していましたが、面接官は痛いところをついてきます(汗)。そして、途中から表情が険しくなり、さらに腕を組んで考え込んでしまいました(泣)。夫は心臓が飛び出そうなくらい緊張したそうです。面接はおそらく15分ほどで終了。無事に合格、1週間以内にビザが貼られたパスポートが自宅に郵送されました。
Step5:渡米
ビザを取得したので渡米します。
今現在働いている会社のH-1Bが本命なので、そのビザが無事に取れてから渡米したかったのですが、入国後でないと2つ目のH-1Bビザは申請できません。夫は3年前にH-1Bの審査に落ちたことがあるので、今回もその可能性もなくはないと思っていました。3年越しの念願の渡米だったので晴れ晴れとした気持ちで行きたかったのですが、不安が入り混じった複雑な気持ちで渡米しました。
Step6:2つ目のH-1Bの申請
弁護士を介し、夫が元々働いている会社からH-1Bを申請します。
こちらの弁護士事務所も、Aとパートナーシップを結んでいる事務所です。ビザの審査は、特別料金を支払って「Premium Processing」という特急審査サービスを申請することが可能です。これを申請すると14日以内に移民局からビザ審査結果が届きます。夫はこのサービスを利用し、1週間以内に通過の返事が来ました。これで晴れてアメリカで働けることとなりました。
[注意点]
・Aとの雇用契約を結びますが、後ろ盾となっているのは、夫が元々働いている会社です。特に、これまでの業務に加え、Aで講師としての業務(週5時間)が発生するので、その点を事前に確認することが大切です。
・通常ルートのH-1Bビザの抽選に応募し続けなければなりません。それが取得できるまで、Aで働く必要があります。Aと雇用契約を終了した場合、保持していた2つのH-1Bビザが失効します。なお、ビザの有効期限は3年、更新可能。
・Aが雇用できる人数が決まっているので、定員オーバーの場合は新規申請はできません。
[ビザ取得の費用]
2つのビザを取得するので、通常のH-1Bビザより費用が嵩みます。会社や条件によって異なるかもしれませんが、100万円〜150万円のようです。
長くなりましたが、以上が私の夫が取得した「抽選なしのH-1Bビザ」についてです。
ビザはアメリカで働きたいと思っている人たちにとって大きな障壁の一つですよね。私たちも過去数年間に渡り散々ビザに悩まされてきたので、その大変さは身に染みています。この記事がどなたかの参考になれば嬉しいです。
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